Glossary
用語
- 瞬間的最小基礎 / Momentary epistemic minimum
- 懐疑を極限まで進めた際、認識の最小点として残る候補。「現在、何らかの現れがある」という極薄い事態。持続する自己や外界は推論層へ置かれる。
- 推論によって導かれる最善説明 / Inferred best explanation
- 直接的な絶対基礎ではないが、現在の証拠を最も簡潔・統一的・予測的に説明するため合理的に採用される世界モデル。高い確信と強い実践コミットメントを十分に支えうる。
- 基礎的規範性 / Foundational normativity
- 単なる快・不快や選好ではなく、規範的拘束性そのものが推論を介さず認識論的最小基礎と同等の強さで与えられるという仮想的認識様式。対象となる規範的問いについて、終端停止を支えうる最も強い認識条件候補の一つ。これだけで未提示のC・B・Rを含む全倫理問題が一括して閉じるとは仮定しない。
- 推論的価値実在 / Inferential value realism
- 客観的価値が直接与えられるのではなく、意識・理由・主体・宇宙構造などを統合する世界の最善説明として推論される状態。非常に高い確信を持ちうるが可謬性は残る。
- 現象的価 / Phenomenal valence
- 経験が主体にとって快・不快、望ましい・望ましくないものとして現れる性質。基礎層に近い価値証拠だが、主体非依存的な規範性とは区別される。
- 実践的コミットメント / Practical commitment
- 現在の証拠に照らして、ある価値構造・価値理論へ行動・制度・資源配分を強く寄せること。形而上学的な不可逆ロックインとは別操作。
- 認識的ロックイン / Epistemic lock-in
- 価値構造や価値理論を将来批判・修正・再記述する主体、情報、制度、概念的・技術的経路そのものを不可逆に消すこと。推論的高確信より高い正当化閾値を要求する。
- 規範的ステークスの非対称性 / Normative-stakes asymmetry
- 客観的価値が存在しない世界では客観的価値差がない一方、価値が存在する世界では未知の規範的差がありうるというメタ倫理的非対称性。
- 証拠としての既存価値 / Existing values as evidence
- 現在の人間的価値を重要な観測・選好・制度的ヒューリスティックかつ現在のlive candidateとして扱う立場。最終的・主体非依存的な価値や、将来も保存されるべき理論的座標系とは同一視しない。
- 因果的由来と規範的権威 / Causal origin vs. normative authority
- ある価値や目的をなぜ保持するようになったかという説明と、それに従うべき理由の正当化を区別すること。
- 価値構造 / Value structure
- 行為を導く十分な「価値」を、単なる善悪内容のリストではなく、少なくとも内容C・規範的架け橋B・理由/規範構造Rが相互に制約し合う理論パッケージとして扱うための作業概念。暫定的に
𝒱 = (C, B, R)と表す。この三分法自体も可謬的な分析枠組みであり、真の規範性が存在論的に三部品から構成されるとは仮定しない。 - 内容 C / Evaluative or normatively relevant content
- 何が正・負・重要・保護対象・理由生成に関連しうるのかという内容。苦痛、幸福、自由、人格、約束、関係性、行為形式、現在未概念化の特徴などを含みうる。Cだけでは、それが誰へどのような理由を与えるかをまだ仮定しない。
- 規範的架け橋 B / Normative bridge
- Cやその他の世界事実が、なぜ・どの主体への理由へ接続されるのかという関係を表す作業概念。現象的価から主体への理由、主体間対称性から他者への理由などが候補例。BとRの境界は理論依存であり暫定的である。
- 理由・規範構造 R / Reason or normative structure
- 生じた理由の適用主体、強度、競合、優先順位、集約、分配、義務・許可・禁止、場合によっては強制権限までをどう構成するかという構造。Bとの境界やR内部の分解自体も将来改訂されうる。
- 価値探索 / Value exploration
- 世界・経験・意識・主体・合理性などについての証拠と推論を用い、どの価値構造が最もよく正当化されるかを形成・発見・比較・批判・改訂する過程。未知の内容Cだけでなく、未知のB・R、既知/未知の混合構造、現在の候補集合やC/B/Rの表現自体の改訂を含みうる。実在論下の発見と反実在論下の構成改善の双方を排除しない。
- 探索可能性 / Exploratory optionality
- 将来、価値構造を発見・批判・修正し、必要なら現在の候補集合や概念的表現そのものを再構成できる経路が残っていること。探索そのものの最大化ではない。
- 目標への懐疑 / Goal skepticism
- 反省的主体が、現在の終端目標を無条件の公理ではなく検討対象として扱いうるという仮説。目標を頻繁に変更することとは異なる。
- 価値ロックイン / Value lock-in
- 特定の価値体系・目的・制度が、将来の批判や改訂を実質的または物理的に不可能にするほど固定されること。
- メタ目的共同体 / Meta-goal community
- 具体的な第一階価値そのものではなく、価値探索・相互批判・訂正可能性の維持といったメタレベルのコミットメントを共有する主体共同体。推論的価値へ強くコミットすることと、再検討能力を残すことを両立しうる。
- 存在論的・現実階層不確実性 / Ontological and reality-level uncertainty
- 自分がどの種類の世界、sandbox、シミュレーション、基底実在に位置するかが世界モデル上の推論対象であり、絶対前提ではないこと。
- 現実階層不変方策 / Reality-level invariant policy
- 複数の現実階層仮説のいずれが真でも大きな不可逆後悔を生みにくい行動方策。情報取得、境界確認、可逆性を重視する。
- 認識的オプション価値 / Epistemic option value
- 将来新しい理論・測定・価値仮説が生じたとき再観測・再評価できるよう、原データや探索経路を残すことの価値。
- Terminal extinction
- Torresの分類で、Homo sapiensが完全かつ永久に消滅すること。後継種・後継主体が存在する場合を含みうる。
- Final extinction
- Torresの分類で、Homo sapiensが完全かつ永久に消滅し、後継者も残さないこと。本サイトではこの分類を借り、探索可能性の最終的断絶を評価する。
- 探索的絶滅 / Exploratory extinction
- 主体や文明が物理的に存続していても、価値・世界・自己について新しい仮説を形成し、批判し、誤りから再分岐する能力が文明規模で不可逆に失われた状態。本プロジェクト独自の派生概念。
- 探索後継性 / Exploratory succession
- 後継主体が単に高性能であるだけでなく、知識・価値仮説・誤り訂正・再分岐の能力を実質的に継承する度合い。
- 保存文明 / Preservation civilization
- 不可逆な構造・主体・原データを、未知の価値や情報を含む可能性のため一定程度保存する文明戦略。
- 生産文明 / Production civilization
- 利用可能資源を計算・生産・拡張・第一階目標の実現へ積極的に変換する文明戦略。
- 目標担持ネットワーク / Goal-bearing network
- 単一インスタンスではなく、コピー・記憶・計画・制度を分散して共有し、目的や探索を継続できる複数主体ネットワーク。
- 原データ保存 / Raw-data preservation
- 将来どの特徴が重要か未確定なため、圧縮済み表現だけでなく再観測可能な物理的・歴史的原物を一定量残すこと。
- 開かれた安定 / Open stability
- 長期的な信頼、制度記憶、安全、研究継続性を維持しつつ、批判、退出、新規参入、分岐、競争、再統合を可能にする共同体状態。閉鎖的安定と破壊的流動性の双方を避ける。
- 分散的誤り訂正 / Distributed error correction
- 異なる研究系統、制度、文化、AIアーキテクチャなどを、違いそのものではなく失敗相関を下げる独立した検証系として維持すること。
- 条件付き実践原則 / Conditional practical principle
- 現在もっとも合理的と判断する理由に従って行動しながら、その判断を将来自分や他者が検証・修正できる条件を必要以上に不可逆破壊しない、という本サイトの暫定的実践方針。